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10. レース型
レースの記号分類化
1. レースを記号分類化する
指数表には「E・EP・P・S・DC・M」といった脚質記号があり、このレース型による分析にたどりつくまでは、出走馬の脚質構成(例えば、逃げ馬「E」が何頭いるか、など)をみながらレースのペースやシナリオを予想していました。
しかしながら、その方法は画一された見解を導き出すものではなく、俗っぽくいえば「風が吹けばアウトプットが変わる」論理性に欠けた不安定なものでした。それを解消し、少しでも予想の精度を上げるにはどうすればいいか、そのために考え出したのが、出走馬の脚質構成によるレースの記号分類化です。
実際に「レースの型」が何通りあるかわかりませんし、それは限りない数かもしれません。しかしながら、長年、競馬を見ていると、時に「過去に似たレースを見たことがあるぞ」そう思うことも少なくありません。例えば「行った行った」「人気薄の単騎逃げ」など。これもレースの型のひとつと言えそうです。
そこで、すべてのパターンを網羅する、または分類することが不可能であっても、何かを「キー」にして、情報を集約することができないか、記憶や経験といったものを呼び起し顕在化させる方法はないものかを考えました。
レース型(Race Shapes)については、Tom Brohamer や James Quinn、Bill Quirin といった先人たちが既に紹介してきた方法論であり、彼らも出走馬の脚質構成や、彼らの方法論が持つ、さまざまなエレメントと絡めながらレースをいくつかのパターンに分けようという試みをしてきています。
ちょうど、ブログ「競馬えれじい」を開設して1年ほど経った頃、筆者も同様の試みをはじめましたがら、第1世代の「レース型」は、十数種類にもおよび、情報の集約(圧縮と表現してもいいかもしれません)のための記号分類としては締まりのないものでした。必要以上に細分化された記号をみたところで、これからはじまるレースがどんなペースになり、どの脚質の馬が有利で、どの馬が不利なのかを想像できなければ意味がないのです。
2. レース型の定義・分類方法
レース型は出走馬の脚質記号の構成をもとに、下表に示す判定条件に沿って分類します。脚質記号の項を飛ばして、こちらから読んだ方にはわかりづらいかもしれませんが、逃げ馬(E)、先行馬(EP)、先行馬の後ろからプレッシャーをかける馬(P)をカウントして、レースを9つの型に分類するというシンプルな仕組みです。
3. レース型の活用
レース型は予想プロセスのうち、以下のような場面で活用します。
- ペースを予測する
- 有利・不利な脚質の馬を見つけ出す
(1)ペースを予測する
読者の皆さんは、逃げ馬や先行馬の数を予想の際に数えていますでしょうか?
いろいろなウェブサイトやブログをみても、レースのペースがどうなるか予測するアプローチというものは皆無です。多くのページが「◎○▲△」の印だけ、ということもありますし、実際は何か方法があるのかもしれませんが知る由もありません。
一般的に逃げ馬や先行馬が多ければ、ペースは速くなると言われていますが、ここでレース型とペースの関係について集計した表を掲載します。なお、サンプルは新馬戦、未勝利戦、未出走戦を除いた 2003年から2006年8月6日までに指数表を出力した、芝1951レース、ダート1723レースです。
レース型ごとのレースペース指数の平均値、中央値に着目すると、やはり、逃げ馬(E)が3頭以上いる「TRIPLE-E」は、芝・ダートともにレースのペース(以下、ペース)が速くなる傾向が見られます。
次に「DOUBLE-E」、「E-EP」と続き、逃げ馬のいない「EP-EP」は、ややペースが緩くなる傾向が見られ、逃げ馬なしで、先行馬(EP)もいない「EP-P」では、その傾向が顕著です。
さらに、逃げ馬(E)が1頭で、それにプレッシャーを与える先行馬(EP)がいない、つまりは多くの場面で「マイペースの単騎逃げ」が見込める「LONE-E」においては、サンプルこそ少ないものの、スローペースになることが見てとれますし、この傾向は、
サンプルは取れませんでしたが、先行馬(EP)が1頭で、あとは後方待機馬(S/DC)という「LONE-EP」や、逃げ・先行がまったく存在しない「NO-EARLY」にも当てはまりそうです。
これらのことをまとめたものが、以下の表になります。指数表をお使いになる方は、これを頭に入れておくことにより、ペース予測の第1ステップが非常に楽になることでしょう。そして、次のステップで、さらに深い考察をすることが必要となります。
先に紹介した「レース型とレースペース指数の関係」の表に記載した、レースペース指数の最大、最小、標準偏差に注目してください。当然のことながら、平均値や中央値にある傾向が認められても、実際に取り得る値には、バラツキが存在します。つまり、すべてのレースにおいて、レース型のみでペースをピタリ予測することは難しいのです。
ここで第2のステップです。第1のステップでの判断が適切なものであるか吟味するのです。レース当日のトラックバイアス(内・外の有利不利)やスピードバイアス(先行馬の速度が減衰しにくい、前が止まり差しが効きやすいなどの傾向)、騎手の脚質傾向などの情報、または戦前の調教師や騎手コメント(これは非常に扱いが難しいですが)や、枠順など、いろいろ取り入れるべき情報はあります。それぞれ皆さんがお持ちのツールや方法論、経験則など、いろいろ補完するものはあるでしょう。
第1ステップ、つまりはレース型のみでの展開・ペース予測が危険である例をあげてみましょう。
例えば「DOUBLE-E」のレースがあったとして、2頭の逃げ馬(E)のうち、1頭が競うことなく、すんなりと2番手に控えた場合、このレースは、指数表の上で「DOUBLE-E」と判定されたレースが、実際には「E-EP」になってしまうのです。
さらに、先行馬(EP)化した、逃げ馬(E)にプレッシャーを与える他の先行馬(EP)がいない場合、逃げた馬はマイペースでラップを刻み、2番手に控えた馬は、その後ろでマイペースを刻むという、いわゆる「行った行った」を誘発するような展開が生まれます。
この「DOUBLE-E」が「E-EP」になってしまった例として、記憶に新しいのが、大荒れの結果となった、2005年の天皇賞(秋)です。[指数表バックナンバーはこちら]
先行馬が止まらないほどの高速トラックではないにしろ、あの開催は直線の芝状態がよほど良かったのか、速い上がりタイムがでる特殊な馬場でした。逃げ馬(E)は、快速馬と評判だった3歳のストーミーカフェと、G1ホースのタップダンスシチー(脚質記号は「E*」、補助記号の「*」は、過去3走で控えた経験があることを意味する)。タップダンスシチーの陣営も、鞍上の佐藤哲三も逃げを匂わせ、超ハイペースを予想する有名評論家もいました。
しかし、レースがはじまってみるとストーミーカフェは、テンの3ハロン37.0秒というブレーキの効いた逃げをみせ、タップダンスシチーは競うことなく2番手に控える展開。指数表上の先行馬(EP)は、たった2頭(キングストレイルとバランスオブゲーム)で、先を行く2頭にプレッシャーを与えませんでした。
その結果、前半1000mの通過が62.4秒という「歩く」ようなラップで、ラストが急激に速くなるというレースとなり、なんとレースペース指数は、超スローの「25」。優勝したのはスローペースで斬れ味を発揮したヘヴンリーロマンス(14番人気)で、2着は懸命の追いをみせた1番人気のゼンノロブロイ。共に上がり3ハロンタイムは、限界とも思える32.7秒。3着には3番手を進み、前が有利という展開の利を得たダンスインザムード(13番人気)で大波乱。
上位入線3頭とも指数ランクでは評価が高かったにしろ、水準以上のペースを予測していれば自然と注目は差し、追い込みに向くのは仕方ないところ。筆者(カミナリ)は、このレースを的中することができませんでした。当時はこのレース型のメソッドはありませんでしたし、これは「たら・れば」の話にはなりますが、ペース予想の段階で、もう少し深くペースや展開を読むことができていれば、もっと良い予想ができていたのではないかと思います。
(2)有利・不利な脚質の馬を見つけ出す
まず、競走馬の能力を何をもって表現するかという問題がありますが、それを置いておいても、能力(例えば、スピード系の指数)が高い馬が毎度勝つわけではないのが競馬です。
例えば指数表上で、高い指数をマークしている2頭が逃げ馬(E)だった場合に、その2頭の馬番連勝の馬券を買うのはベストの戦略ではないでしょう。互いにハナ争いをして削りあった場合や、ハナに立てなかった結果、まったく力が出せないケースを想定すべきです。
よく筆者はブログなどの記事で「ストレスフルな競馬」という表現を使いますが、競走馬というものは、個体差こそあれ、このストレスに弱いものだと思います。馬群で揉まれれて能力が出せない馬、後ろからのプレッシャーに弱い馬、単騎で逃げないと潰れてしまう馬、思いつくだけでも、いろいろあります。好走するにも、凡走するにも条件があるのです。まず、ストレスによる有利・不利が一点ということになります。
それでは、次にスローが予測される「LONE-E」や「LONE-EP」で、人気、または指数上位の追い込み馬(Deep Closer)の単勝馬券を買うのはどうでしょうか。まず、過去の好走時の指数をマークし、完全な前残りのスローペースを最後方からゴボウ抜きするほど強い馬でない限り、脚を余す危険性が高く、これも良い筋だとは言えません。
それが「NO-EARLY」にまでなると、誰も積極的に前に行こうとしないので、馬群がひとかたまりになり、直線の差し脚だけの勝負になりかねません。この場合にはスローでも追い込み馬が上位入線する可能性は「LONE-E」や「LONE-EP」のときよりも確率が上がるでしょう。
つまり、これはペースによる有利・不利。こちらもレース型を足がかりにして、見つけ出すことが可能です。
4. レース型と上位入線馬の脚質、芝とダートの違い
参考までにレース型と上位入線馬の脚質について集計した表を掲載します。
表の見出しにある確定脚質とは、レース後の脚質記号、つまり実際に走った位置取りによる脚質を意味します。指数表では、逃げ馬(E)が不在であっても、いずれかの馬が、逃げ馬(E)の役目をすることを想像して頂ければ意図がわかって頂けると思います。

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まず、表をご覧になる際に、留意して頂きたいのが、それぞれの脚質が1レースに出現する割合です。例えば、レース型「E-EP」の場合、何頭立てのレースであろうと、逃げ馬(E)は1頭しかいません。また、集計の際には、各馬の能力を考慮していません。サンプルが不足気味ですが、これらの点をふまえてレース型と有利・不利な脚質の関係について参考にしてみてください。
脚質記号の項でも述べましたが、芝のレースとダートのレースは違う特徴を持ちます。多くの方法論が芝とダートのレースを混同し、同じアプローチで語っていますが、競馬に勝つためには、その違いをはっきりと認識すべきです。
まず、確定脚質の逃げ馬(E)と先行馬(EP)の勝率・複勝率をみると、芝のレースに比べて、ダートのほうがより高いことがわかります。つまり、ダートでは先行脚質(E/EP)が有利ということになるわけですが、芝のレースと比較し、とりわけ、逃げ馬(E)の勝率が高いことには注目すべきでしょう。
もちろん能力評価あってのことですが、後方待機型(S/DC)の勝率が悪いことからも、ダートのレースでは、後方待機型(S/DC)の馬を単勝や馬単、3連単の頭として、指名するのはリスクが高い大きい戦略ではないでしょうか。
後方待機型(S/DC)の成績が悪いというのは、ポジショニング(位置取り)のロスを差し脚でリカバリーできないと言い換えることができると思うのですが、芝とダートのレースにはどのような違いがあるのでしょうか。
以下は、1200m戦における、テン3Fとラスト3Fのラップタイムの平均を比較したものです。
テンとラストの3Fラップを、比と差を用いて比較しているのですが、芝と比較して、ダートはラスト3Fに時計を要しており、前半から後半にかけてスピードの落差が大きいことがわかります。この表からも、ダート戦では差し脚により、位置取りのロスを取り返しづらいことがわかります。
余談ですが、ダートのレースが主体の米国における予想理論は、前半のスピードや、ポジショニング(位置取り)に重きを置いているものが多いですが、これはダート戦の特性を捕らえてのものだということがわかります。
一方、芝のレースはどうでしょう。先ほどの表の1着馬の確定脚質の欄をみると、ペースが速くなるにつれ、中団待機馬(Presser)のチャンスが大きくなり、ペースが遅くなれば、逃げ馬(E)や先行馬(EP)のチャンスが増すという傾向がダートより、若干ですが強くみられます。
ここまで、レース型や、そこから派生する事柄について述べてきましたが、大切なことは、実際のレースがどのような展開・ペースになるのかをしっかりと予測することです。それによって、浮かびあがる馬や、馬券に不要な馬が1頭でも見つかれば馬券戦略は大きく変わります。例えば、3連複5頭ボックス(10点)と6頭ボックス(20点)では、購入点数が倍違います。これは、回収率を考えると大きい飛躍です。
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